Posterior Bite Collapse(臼歯部咬合崩壊)とは?
歯周病、虫歯、欠損歯などの放置により、歯の病的移動やさらなる欠損歯の増加を招き、臼歯部の咬合支持を失い、前歯部の咬合誘導が機能しないため、更なる臼歯部への咬合性外傷が加わるという負のスパイラルに陥ってしまった状態が、Posterior Bite Collapseである。
咬合性外傷の他の側面として歯髄炎、歯根破折などもみられる。
このように全体的な咬合の崩壊を生じている場合は、歯周病治療と咬合再構成を行いながら、最終的な補綴処置(歯の被せを作る処置)を必要とする。
特にこのような状態においては、臼歯部での咬合の支持が行えない、あるいは喪失していることが多いため、臼歯部でのしっかりとした咬合支持のために、インプラント治療が必要になる事が多い。
このような複雑な治療には、歯周病治療、インプラント治療、咬合治療、矯正治療、補綴治療といったあらゆる分野の知識を必要とする包括治療を行わなければなりません。
治療期間も長期化するため、患者さんと担当医の双方が忍耐強く、治療を継続しなければならなくなります。
治療手順
1. 診査・診断
レントゲン撮影、模型印象、口腔内写真撮影などを行い、現状を詳しく把握し、治療を進める手順を検討する
2. 治療説明
診査と診断の結果から、治療の進め方、費用、治療期間などについて説明する
3. 歯周基本治療と緊急処置
Posterior Bite Collapseでは、重度歯周病の進行を伴っていることがほどんどであるため、初期の炎症除去のために歯周基本治療を行う。それと同時に、治療中に進行する可能性のある虫歯の仮処置や保存不可能と考えられる歯の抜歯や腫れを伴うような炎症の除去に努める
4. 暫間的な咬合の回復(ホーレーバイトプレーン、義歯、仮歯を用いて)
この時点ではまだ、確定的な垂直的な咬合高さを決められないため、生理的に妥当と考えられる咬合高さを決めて治療を進めていく。
このような暫間的な咬合高さの決定や咬合支持、歯の移動を目的としてホーレーバイトプレーンなどが用いられる
5. 本格的治療
確定的な歯周病処置(歯周外科や歯周組織再生療法)、矯正処置、インプラント治療などを行っていく。
これらの治療に平行して、虫歯治療や根管治療を行っていく
6. 最終的咬合位置の決定
最終的な咬合位置を決定する場合には、最終的な形態を仮歯に反映させて、実際に口腔内である程度の期間使用して経過を見る場合がある。
この経過観察期間において、機能的、審美的に問題がなければ、このデータを最終補綴物にコピーして製作し、口腔内に装着する
7. バイトプレーンの装着とメインテナンス
治療後、個々の歯に異常な咬合力が加わることを避けるために、できるだけバイトプレーンを装着してもらう。
今後メインテナンスがいわゆる治療の始まりである。
症例
症例1
術前
術後7年
症例2
術前:上顎前歯が臼歯咬合崩壊により突き上げられて前方に傾いている
術後13年
症例3
術前
術後2年
Posterior Bite Collapse(臼歯咬合崩壊)を放置すると発生する問題
- むし歯や歯周病になりやすい
- 口臭の原因になる
- よく噛めない
- 心臓病や肺の疾患などを悪化させる可能性が高い
- 肩こり、腰痛、偏頭痛、あごの病気の原因になる
- 発音が悪くなる
- 左右の顔の筋肉のバランスが変わり、顔の歪みなどの原因になる
臼歯咬合崩壊のように種々の要因が関与し、多くの問題を抱えた状態の場合は、できるだけ早い段階での治療が、問題解決にいたる過程が少しでも簡単になります。
このように多くの問題が生じてしまった場合、歯科医院に行くことに不安や恐怖感を持たれるかもしれませんが、あきらめないで下さい。
いったん治療が終了すると、後に何か問題が生じても、全体の基準が構築されているため、治療が非常に簡単になります。
私たち富永歯科クリニックのドクターは、最後まであきらめず努力いたしますので、ぜひ一緒に頑張って治療しましょう。