こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック副院長 赤野弘明です。
人工関節を入れる手術や人工心臓弁や何か体に人工物を入れる場合に、主治医から、「手術の前に歯医者に行って、お口の中を掃除してきてください。」と言われることがあると思います。なぜ膝の手術をするのにお口の中の掃除をしないといけないのかと思った事はないでしょうか?
人工関節手術と歯の治療
関節が人工関節に置き換わると、細菌と戦う 白血球やリンパ球などが届きにくくなります。虫歯や歯周病を放置したまま手術をすると、口の中の細菌が血液中に入り、血液の流れに乗って(このような状態を敗血症や菌血症とよびます。)細菌がこれらの人工関節の周りに感染する恐れがあるからです。 手術後であっても抜歯や重度の歯周病は、血液に口の中の細菌が入るリスクが高まるため、手術前に歯科治療を終わらせておく必要があります。従って、手術後にもお口の中を良好な衛生状態に維持する事は、とても大切な事です。そのため、予防のための定期的な歯科検診も重要です。 口の中から感染リスクを減らすのはもちろん重要ですが、歯を大切にすることはそれ自体が健康 寿命を伸ばすことにもつながります。
歯周病と全身疾患
歯周病ということは、口の中で常に炎症が続いているということです。その際、炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を起こしたり悪化させる原因となります。
炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くしたり(糖尿病)、早産・低体重児出産・肥満・血管の動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)にも関与しています。
また、歯周病菌のなかには、誤嚥により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。歯周病菌のひとつP.g菌(Porphyromonas gingivalis)がもつ”ジンジパイン”というタンパク質分界酵素はアルツハイマー型認知症の悪化の引き金をもつ可能性が示唆されています。また、歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)ができて、血液の通り道は細くなります。プラークが剥がれて血の塊(血栓)が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まります。
脳梗塞とは、脳の血管に、プラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。歯周病の人は、そうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われています。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。
歯周病は、以前から糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。
さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきています。歯周病では?と心配な方、長期に歯科受診をされていない方、歯医者さんに行って、お口の中の検診を受けてみませんか
富永歯科クリニック 副院長 赤野弘明