こんにちは。大阪市福島区の歯医者　富永歯科クリニック院長　富永佳代子です。今回は、口腔保湿剤についてお話します。お口の中の乾燥が気になる方、何らかの疾患で唾液の分泌が減少して、お口の中の乾燥が気になる方に、口腔保湿剤の使用を勧めることがあります。近年では、市場に多くの種類が出回っていますが、目的によって選ぶことが大事です。「とりあえず塗っておく」のではなく、「効果を期待して使用する」ものなのです。

口腔乾燥状態とは

お口の中が乾燥していると感じても、人それぞれで感じ方に違いがあります。客観的に判断するために、口腔乾燥状態の臨床診断紹介します。

正常　　　　以下の項目に当てはまるものがない　　　→　治療の必要なし

軽度　　　　唾液の粘性が亢進　　　　　　　　　　　→　症状が無ければ生活指導

中等度　　　唾液中に細かい泡がある。　　　　　　　→　治療の必要あり

重度　　　　舌のの上にほとんど唾液が無い、乾いている　→治療の必要あり

口腔保湿剤の成分は？

口腔保湿剤の成分表を見ると、様々なものが書かれています。配合成分が理解できると、選びやすくなります。どの製品も、基本的に水が含まれています。

湿潤剤

・グリセリン　　水分を保持、口腔内を湿潤に保つ効果あり。口腔内の細菌の繁殖防止

・ヒアルロン酸　保湿効果菌の繁殖を抑制が非常に高い。口腔内の粘膜や歯肉の乾燥防止
炎症抑制作用のため口内炎や歯肉炎の予防

・ビタミンE　　 保湿作用　口腔内の炎症抑制のため口内炎の予防。
抗酸化作用があるので口腔内の細胞の老化

・ポリエチレングリコール 保湿効果　口腔内の滑りを改善

粘結剤

他の成分を口腔内にとどまらせる効果

・キシリトール　　虫歯　乾燥の予防効果

・セルロースガム　口腔内の保湿効果　薬剤を長く口腔内にとどまらせる効果

 

刺激剤

血行促進　唾液分泌促進、抗菌　口臭抑制効果

・アルコール　　抗菌作用　口臭予防。濃度が濃すぎると、粘膜刺激に注意、
アレルギーの方への使用禁止

・メントール　　口腔内の熱感や不快感和をやわらげ、清涼感、爽快感、殺菌作用
過剰使用で、口腔内の粘膜刺激　炎症を引き起こす可能性

 

防腐剤

製品の品質を維持するため

・パラベン　　製品の品質を保持　腐敗や細菌の繁殖を防止

抗炎症作用をもつ成分

・アロエベラ　保湿効果　口腔内の炎症を抑制

・シナモンエキス　抗菌作用　口腔内の細菌の繁殖を防止

・グリチルリチン酸　口腔内の炎症を軽減

用途に応じた剤形を利用しましょう

口腔保湿剤には、スプレー、リキッド、ジェル、シートタイプなどの剤形があります。使用量は、製品の使用方法をよく確認ください。

スプレータイプ

口の中でスプレーすることで、広範囲に保湿効果を与えることができます。但し、スプレーは粒子が細かく、喉に入ってしまう可能性があり、むせや誤飲に注意が必要外出先などの使用は便利　持続時間は短めです。

リキッドタイプ

広範囲、狭い範囲の塗布が可能で操作性もよく、凹凸のある歯や歯肉にも密着しやすい。液状であるため、少量ずつ使用しないと、誤嚥やお口の中から漏れてしまうことが多い。持続時間は短い。

ジェルタイプ

粘性があるため、口腔内に留まりやすく、保湿効果が長時間持続。乾燥してくると、餅状になり不快感

シートタイプ

保湿剤が含まれたシートなので、口腔内を清掃しつつ、保湿効果を得ることが可能使用時に口腔内を触ることにより、口腔内の乾燥、食物残差，病変などの状態を確認可能。乾燥が激しい場合は、他の口腔保湿剤との併用が必要、長時間の効果は低い。

口腔保湿剤の裏面や添付書類にある薬事分類を見てみましょう。「化粧品」「洗口液」「歯磨き」「清涼剤」「食品」などに分類されています。これらの分類は、各メーカーがどの分類で製品登録したかが大きく反映されているだけです。しかし、成分内容から、目的が考えて、選択することが望ましいと言えます。例えば「化粧品」であれば、お肌の化粧品と同様の扱いであることがわかります。お肌の乾燥であれば、保湿(ヒアルロン酸)水分の蒸発防止（ワセリン、グリセリン）などが中心ですが、口腔内は、常に湿っている必要があり、保湿や蒸発防止に加え、水分補給は重要となります。

富永歯科クリニック院長　富永佳代子