こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。食と健康との関係が密であることは、皆さんお分かりだと思います。特に高齢者こそ、しっかり食べる必要があります。今回は高齢者の栄養について、お話します。
高齢者こそ、しっかり食べよう!
通常、日本人は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中などの生活習慣病を予防するために、減塩、低脂肪、低糖質といった制限重視の食事を心がけていることと思います。またそういった食事内容を身体によい食事としています。しかし、そういった食事が必要なのは、高齢者(65歳以上)になる前の人たちであって、高齢者にとって必要な食事は、老化現象以上に身体の機能を落とさないようにする食事になります。つまり、フレイルを止めたり、改善したりする食事となります。大事なのはタンパク質とエネルギーをしっかりと摂取すること(腎臓病で低タンパク質食事療法食事療法をしている場合を除く)です。しかし、高齢者になると活動量の低下や病気・治療の影響の他、加齢による様々な理由が重なり食欲不振をいう現象が起きてきます。
食欲不振はなぜ?
病的なもの以外の食欲不振には二つの大きな理由があります。
①感覚機能の低下
感覚器は50歳代を境に徐々に機能が低下します。そして、高齢者になると、味覚・嗅覚が顕著に低下します。それによって閾値があがり、美味しいと感じにくくなります。特に塩味はわかりやすく気付く場合が多く、家族に塩辛いと指摘されても、自覚できないというのも、加齢の症状です。
②文化的な刷り込み
高齢者は腹八分目位が良い、脂っこいもの、味の濃いものは控えめ、肉より魚、など科学的な裏付けのない刷り込みで、本当はもっと食べたいのに食事量を制限されていることがあります。
見た目ではわかりにくい低栄養
高齢者の栄養状態において、低栄養に陥ることが一番の問題です。低栄養とは、体が必要とする栄養量が取れていない状態(栄養障害)を言います。低栄養には、病気に関連した低栄養と栄養摂取不足で引き起こされる低栄養があり、前者では、基礎疾患のコントロールと低栄養の立て直しを、後者なら栄耀摂取量を増やすことが必要となります。但し、低栄養は見た目にはわかりにくく、痩せ以外の症状はありません。最も重要なのは体重の変化ですが、体重が減っていなくても、低栄養を診断される人もいます。多くの病気は、1つのマーカーや1つの所見で診断できるのとは違い、多面的評価で総合的に判断するというのが、低栄養の味方の基本です。
低栄養になる要因
低栄養になる理由として、食欲不振以外にも義歯や咀嚼力の低下などの口腔状態、嚥下障害、認知機能の低下など、さまざまなことが関係しています。一部には消化管の消化吸収能力の変化も一因に挙げられますが、消化吸収に関しては、加齢の変化を受けないというのが定説です。また、日常的に食事ができている人は栄養障害を引き起こすほどビタミンやミネラルが欠乏することはないので、そうした栄養素の摂取不足を気にしすぎる必要はありません。
低栄養になると?
低栄養は寿命が縮まっていくサインです。低栄養を診断された時点で多くの代謝機能に異常をきたし、低栄養でない人に比較して生命予後が短くなります。また低栄養になると、心血管系疾患や認知症のリスクが高くなると言われていますが、現在明らかなエビデンスはありません。認知症に関しては、因果関係が逆で、多くは認知機能が低下するから食事がうまく取れずに低栄養になります。一方で低栄養になると、感染症のリスクが高くなったり、フレイルやサルコペニアになりやすくなることは知られています。
やや難しい話になりましたが、次回は、その対策をお話します。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子