こんにちは。大阪市福島区の歯医者「富永歯科クリニック」 院長 富永佳代子です。前回まで 小学学校6年間の子供の歯の成長についてお話をきました。今回は現代の子供の歯の問題点について、お話しします。
子供の歯並び
昭和50年代ごろまで、子供の歯の最大の問題点は、虫歯でしたが、学校検診、歯磨き指導、家庭での躾などで、平成、令和の時代、虫歯のある子どもの数は、かなり減少しました。現代では、歯医者さんにくるお子さんの相談内容は、歯並びの心配です。学校検診では、不正咬合と診断されて、健診結果用紙をもらってきます。
その原因は?
原因として、子供の顎の大きさが小さくなってきたこと、つまり小顔があげられます。大人の歯は全部で28本、親知らずを含むと32本です。
顎が小さくなり歯が生えるスペースが小さくなってきているのに、歯の大きさ、本数が変わらなければ、どうなるでしょうか?歯は生えるスペースを探して重なって生えるしかないのです。そのため、犬歯が飛び出した状態で生えて、いわゆる八重歯と言われる状態になります。歯が重なって生えると、歯ブラシできれいに磨けないため、将来的に虫歯、歯周病のリスクが高まります。
顎が小さくなっている一つの原因に、食生活の変化があげられます。食生活はここ30年ぐらいで欧米化しました。ハンバーグやカレー、シチューなど、柔らかく食べやすいメニューが増えてきています。そのため、噛む回数、噛む力が減少して、顎の形がほっそりしてきました。噛む力が減ると、「硬いものを噛めない」「飲み込めない」とさらに、柔らかいものばかり好むことになります。
対策は?
しっかりとした顎を育てるために、6歳臼歯が生えてくる小学1年生頃から、歯ごたえのあるものを食べるように献立を考えてください。噛み応えのある和食メニューを増やすのが良いのですが、カレーであれば、具材を大きくカットする。野菜もお肉も、ゴロゴロした大きさで、噛む回数を増やすようにしてはいかがでしょうか?お子さんの数が少なくなって、丁寧な育児、家事をしているお母さんが増えているのは、とても良いことと思います。
しかし、食育に関しては、昔ながらの素朴な献立が良いのではないでしょうか?間食も、柔らかいケーキではなく,お煎餅、ナッツ、するめなど、噛む回数を増やすように、工夫をしてみてください。
お口ぽかーん
お口が開いたままのお子さんが、増加傾向にあります。学校で授業を受けているとき、テレビを見ているとき、本を読んでいるときに、無防備に口を開けっぱなしにしていると、口の中は乾燥してしまいます。唾液には、歯の汚れを洗い流す自浄作用があります。つまり、唾液が減ると、虫歯菌が繁殖しやすく、喉も乾燥して風邪をひきやすい状況になります。さらに口呼吸は、歯並びに影響することもわかっています。口が開いたまま、口呼吸を続けていると、前歯が突き出してきて、いわゆる出っ歯の原因となり、歯の矯正が必要になります。
原因は、口の周囲の筋肉が弱いこと、周りの声掛けの低下などが考えられます。幼児の場合、口は意識的に閉じようとしないと、開けっ放しになりやすいのです。幼児期は、できるだけ「お口をしっかり閉じましょう」と、声掛けをすることを心がけてください。
しかし、口を閉じようとしても、できない場合があります。鼻の病気(鼻炎、蓄膿症)、体の姿勢、すでに歯並びが悪い場合などです。この場合は、いくら「お口を閉じなさい」と言ってもできないので、原因を調べるために、耳鼻咽喉科、矯正歯科の先生に相談が必要となります。
唾液の量の減少
現代の子供の問題に唾液の量の減少が挙げられます。現代社会はストレス社会。大人だけでなく子供も多かれ少なかれ、ストレスを抱えながら生活をしています。ストレスが多いと、交感神経が優位に立つので、緊急戦闘体制をとり、消化機能が抑えられます。そのため、唾液量が減り、口の中が乾き、自浄作用が妨げられ、虫歯菌の増殖に繋がるのです。ストレスをなくすことは不可能な時代ですが、予防法は昔に比べて発展しているので、対策はできます。
お子さんの歯を守るため、健康で楽しい食生活を送るため、健全な永久歯を作るために、できることはたくさんあります。最低1年に一回、歯医者さんに行って、お子さんと共にお口の中の健康改善向上を目指しましょう。
富永歯科クリニック 院長 富永 佳代子