こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 院長 富永佳代子です。今回は、歯石除去をした後の不快症状についてお話しします。
歯医者さんに行って歯石を取ってもらったら、「冷たいものがしみて痛い!」「歯茎が下がって、歯が長く見える」「歯と歯の間に隙間ができてしまった!」など、「歯石を取ったら前より辛い状況になってしまった。」と感じる方がおられます。
歯石を取ったら、冷たいものがしみる
歯石は細菌の塊であるプラーク(歯垢)が唾液の中のあるカルシウムやリンと結合して石灰化して石のように固く歯の表面に付着します。唾液の性状によって、歯石がつきやすい人、つきにくい人、歯の位置によっても沈着しやすさは違います。一番よく沈着するのは、下の前歯の裏側です。これは、舌の下に唾液の出る唾液腺があるためです。長期間歯石が沈着してしまうと、どんどん硬くなり歯に強固に沈着するので、除去したときに歯のしみる症状が増してしまいます。特に歯周ポケットの中の歯の根っこの部分に沈着した歯石を取ると、その後しみる症状が増してしまいます。
歯石の種類
歯石には2種類あります。
①歯肉縁上歯石
歯肉より上に沈着する乳白色で柔らかい歯石で、除去後しみても、数日で症状は軽減します。知覚過敏対策の歯磨き粉の使用や、医院で使用する薬剤塗布で、対応可能なことが多いです。
②歯肉縁下歯石
歯周ポケットの中にできる黒色の硬く強く沈着している歯石です。血液成分の鉄分が沈着するので黒色になります。縁下歯石は、歯周病菌の塊であり、放置していると歯周病が進行する原因になります。そもそも縁下歯石があるということは歯周ポケットがあるということです。そして炎症があるので、歯肉から出血し、歯石に鉄分が付着して黒い歯石となるのです。つまり縁下歯石は歯周病になっているというメルクマールなのです。
なぜしみるの?
縁下歯石が沈着する歯の根っこは、象牙質という組織で構成されています。表面はでこぼこしていてきめが粗いので、歯石が深くかみこんで、硬くこびりついてしまいます。象牙質は 象牙細管という神経に通じる小さな管がたくさんあり表面が肌の毛穴のようにぷつぷつと開いているイメージを想像してください。歯石を取ると、歯石でふさがれていた小さな穴が見えてしまい、冷たいものを飲むと、しみると感じるのです。知覚過敏対応の歯磨き粉では、症状改善は、難しいことが多いので、医院での薬剤対応は必須です。しみる症状がひどい時は、神経を取らないと治らないこともあります。
歯石を取らなければよかったと後悔するかもしれませんが、縁下歯石を放置していると、歯周病が進行し、周囲の骨が溶けて、歯を失うことになります。最近は歯周病菌の出す毒素により心疾患、糖尿病、肝臓病、腎臓病、脳梗塞などの進行に関係することがわかっています。つまり、しみるという不快症状が出るとしても、歯石は除去すべきなのです。
歯茎が下がった
縁下歯石を除去して、ブラッシングを改善すると、今まで炎症状態で赤く腫れていた歯肉が引き締まり、「なんだか見えている歯の量が増えて歯が長くなった」「歯茎が下がった」と訴える方がおられます。これは歯肉退縮と言いますが、もともと歯周病で骨が吸収して量が減少しているので、単に歯肉が腫れて肥えていて歯の大きさがそれなりに見えていただけです。病的な状態なのです。残念ながら、骨吸収が進行して歯肉退縮をした歯に対して、元に戻す方法はありません。磨かなければ、歯肉退縮しないから、そっちの方が良いと考える方もおられますが、将来的に歯周病が進行して、歯を失うことになります。
歯周病は一度罹患し放置していると必ず進行します。治療処置をしないと進行を止めることはできないのです。
定期的な歯石除去を!
歯医者さんや歯科衛生士さんに、定期的に歯石を除去してもらえば、硬く沈着する歯石防止になります。1年以上歯石を除去していない場合は、硬くてこびりついているので、除去に時間もかかり、不快症状も出やすい傾向にあります。最初は辛いかもしれませんが、3~4カ月に一回、少なくとも6カ月に一回歯石除去をしていると、しみる症状は少なくなってきます。ぜひ、歯医者さんにいって、定期的な歯石除去をしてください。しみる症状が出たら、遠慮なく伝えてください。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子