こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。今回も、前回に引き続き、中高年に多い根面カリエスについて、特にその対処方法、予防方法についてお話します。
どうして根面カリエスが厄介なんでしょうか?
根面の虫歯が厄介な理由は、「早期発見が困難!」なことです。
①自覚症状がない
根面カリエスには、通常の虫歯と違って、「しみる」「痛い」などの自覚症状はほとんどありません。そのため、知らないうちに進行していて、気づいた時には歯を残すことが困難になることがよくあります。根面カリエスは、数年かけて徐々に進行することもあれば、短期間に急速に進む場合もあります。どちらの場合も、痛みの症状は出にくいです。
②色の変化がない
虫歯になると、通常は歯の色が変色、茶色から黒くなって、ご本人が鏡を見て発見することが可能です。しかし、根面カリエスの場合、象牙質と同じ乳白色のままで、色の変化が少なく、専門家でも、初期段階では発見が遅れる場合があります。
③見えない部分にできる
根面カリエスは、唇で隠れている歯の根元にできるので、人に指摘されることもなく、大半の人が虫歯になっていることを気づきません。シニア世代では、約6割の方に根面カリエスが認められると報告されています。
④セルフケアが困難
根面は、歯ブラシが届きにくい場所で、磨き残してしまうことが多いので、虫歯リスクが高くなりがちです。加齢に伴い、手指を動かすのが苦手になると、なおさらリスクが上がります。
⑤象牙質は酸に弱い
歯の根面の象牙質は、歯のかみ合わせの表面のエナメル質に比較して、酸に弱く溶けやすいため、磨き残しのプラーク(細菌の塊)の影響を受けやすいのです。
⑥治療が難しい
かみ合わせの面の虫歯は、虫歯の部分を除去して進行を抑えて、詰め物や被せ物を入れるというのが、標準的な処置です。しかし、根面カリエスは、むやみに虫歯の部分を除去すると、歯が折れてしまうことがあります。また、歯茎で隠れた部分に虫歯が広がっているため、器具が物理的に届かず、虫歯を除去するのも、詰め物をするのも困難なことがあります。
⑦治療後も長期に安定しにくい
根面カリエスが広がると、歯の神経の治療をして、被せ物を入れることがあります。この場合、「歯周病によって骨が減っている」「そのため歯ぐきより上に出ている部分が増えて、歯の力のかかるバランスが悪くなる」「歯の歯質が減っている」「歯の神経を除去している」などの理由で、予後が不良となります。このような観点から根面カリエスの治療を受けた歯は、以前より弱くなるので、ケアが重要になります。
定期検診で進行防止と予防を!
根面カリエスの進行防止と予防には、歯医者さんでの定期検診が大事です。最初期には、発見が難しいのですが、定期的に受診していると、早期発見、早期治療が可能です。食生活、歯磨き指導、フッ素塗布などで、進行抑制が可能です。根面が露出する最大の原因は、歯周病です。歯周病の予防のために、定期検診を欠かさないようにしましょう。
家庭でできることは?
ご家庭でのフッ素の利用も進行防止に役立ちます。1450ppmの歯磨き剤を使用し、フッ素洗口液を併用してください。フッ素は、エナメル質、象牙質に作用し、再石灰化の促進、脱灰の抑制、細菌の酸生産の抑制に効果があります。歯磨きをしてから、就寝前に使用するのが効果的です。フッ素洗口液は、液体を含んで30秒ほどブクブクうがいをするだけです。とても簡単で歯磨きの上手下手は関係ありません。液体なので、歯ブラシが届きにくい場所にも届くのも利点です。
わからないことがあれば、ぜひ、定期検診を受けて、歯医者さん、歯科衛生士さんから歯磨き指導時にアドバイスを受けてくださいね。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子