こんにちは、大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。今回も、前回に引き続き、高齢者の栄養摂取についてお話します。
高齢者に必要な栄養は?
高齢者が筋肉や身体機能を維持するうえで必要な栄養は、タンパク質、ビタミンD、油です。
タンパク質
タンパク質は、筋肉や臓器などを構成する主たる成分です。体の機能調整のための酵素やホルモン、感染に打ち勝つための抗体を作るためにも必要です。食事で摂取したタンパク質は、一旦アミノ酸に分解され、それを吸収して体に必要なたんぱく質を合成します。そのため、多くのエネルギーが必要になるので、単にタンパク質を摂取しているだけでは、エネルギー不足に陥ります。
身体を構成するタンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されています。11種類は、体内で合成できますが、9種類の必須アミノ酸は、毎日の食事からとる必要があります。その9種類をバランスよく摂取しなければ、タンパク質合成に支障をきたします。アミノ酸スコアの高い食品は、鶏肉、豚肉、牛肉、いわし、ぶり、あじ、牛乳、ヨーグルト、鶏卵などです。
高齢者(65歳以上)のタンパク質摂取量は、男性は一日60グラム、女性は50グラムを下限とします。わかりやすく言うと、肉類では鶏ささみ100gでタンパク量約24g、和牛ヒレ肉生100gで約20g、つまり一日に約250gのお肉を食べる必要があります。魚、乳製品、大豆製品、卵などをまんべんなく摂るようにしましょう。
ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を調節し、骨の代謝を活発にする働きがあります。不足すると転倒や骨折のリスクが高まります。フレイル、サルコペニア、骨粗鬆症の人は、健常者に比べて、ビタミンDの血中濃度が低いことはわかっています、
ビタミンDの多い食物は、紅サケ、うなぎ、干しシイタケ、卵や乳製品にも含まれています。また、日光を浴びることによって、皮膚でも生成できるので、散歩などの外出活動をするようにしましょう。
油
油は、脂肪酸の組成によって種類があります。
・オメガ3系脂肪酸 シソ(エゴマ)油 アマニ油、
青魚免疫力を高め、動脈硬化予防、熱に弱いので、サラダなどにかけて食べる
・オメガ6系脂肪酸 コーン油、グレープシード油、大豆油
血中コレステロールを下げる効果。加工食品に含まれてるので、摂り過ぎに注意
・オメガ9系脂肪酸 オリーブオイル、ナッツ類
過酸化脂質の生成抑制、LDL(悪玉コレステロール)を上げない効果
抗酸化成分が多いので、加熱調理に最適
高齢者の食事では、エネルギーが必要なので、油を取ることも忘れないようにしましょう。
おやつを上手に取り入れて
食欲や口腔機能低下により、1回の食事量が減ってきている方は、間食(おやつ)を取ることで、エネルギー摂取量を補いましょう。卵、乳製品、豆類など。油を多く含むクッキーやチョコレート、パンも適しています。あんパンやどら焼きと牛乳や豆乳を間食に取り入れることにより、エネルギー摂取、タンパク質、脂質、水分補給になります。だらだらと食べるのは、虫歯のリスクを高めますが、時間を決めて間食を取り、歯磨きをするようにしてください。
地中海食をご存じですか?
地中海食は、イタリア、ギリシャ、スペインなどの伝統食で、肥満を予防改善するダイエット食としても知られてきました。加工食品の摂取を少なくして、新鮮な旬の食材を利用した食であり、魚介類、オリーブオイル、ナッツ類などをとり、植物性食品を豊富にとれる食事になっています。そのため,死亡率の低下、心血管障害、がん、アルツハイマー病の発生率を抑制する効果があるとの報告があります。日頃の食事は、素材自体の味を楽しみ、シンプルな食事を楽しみ、外食時には、他の食事形態を楽しむようにしてはいかがでしょうか?
富永歯科クリニック院長 富永佳代子