こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 院長 富永佳代子です。前回に引き続き、酸蝕症について 特に飲食物に関してお話します。
常用飲料について
日頃、スーパーマーケット、コンビニエンスストアで目にする飲み物は、多くが酸性です。㏗が低く糖質を多く含む飲み物は、虫歯及び酸蝕症のリスクが高いので、長時間にだらだら、ちびちび飲むのは危険と言えます。「炭酸飲料は歯を溶かす」と聞いたことがありませんか。しかし、単なる炭酸水は悪者ではないのです。炭酸以外に、酸味料(リン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、ビタミンⅭ=アスコルビン酸、レモン果汁)などの添加物や糖質が含まれていなければお水と一緒なので、長時間飲んでも大丈夫なのです。ご自分の常用している飲料物の成分を確認してみてはいかがでしょうか。かくいう私も、レモンチューハイ、果汁入りチューハイを常用するのですが、夕食の短時間で飲むようにして、その後お茶や水を飲んで口の中に酸が残らないように心がけています。
以下に飲料物の酸性度を紹介します。数字が小さいほど酸性度は高く、㏗7.0で中性です。
コーラ(㏗2.8)缶酎ハイ(㏗3.2)スポーツドリンク、オレンジジュース、ワイン(㏗3.5)
アイスフルーティー(㏗3.5~3.8)ビール(㏗4.3)無糖缶コーヒー(㏗5.7)
ペットボトルのお茶(㏗6.3)
参考までに牛乳(㏗6.8)。
食品にも注意
酸性の強い果物を紹介します。
レモン(㏗2.0)オレンジ、リンゴ、グレープフルーツ、桃(㏗2.5~3.0)
酢(㏗3.0)ブドウ、パイナップル、イチゴ(㏗3.0~4.0)トマト(㏗3.5)
お酢は想像通り、酸味が強く歯が溶ける想像はできます。トマトは意外ではないでしょうか?トマトは酸味が強く皮ごと食べると、酸によって溶け始めた歯の表面に力が加わり削れていきます。また、甘い果物も酸性度が強く、酸蝕症のリスクが高いのです。
飲み方、食べ方に注意
炭酸飲料を口の中で長く停滞させて飲み込んでいませんか?これは、歯が酸と接触する時間が長くなるので、酸蝕症のリスクが上がります。また、酸味の強い柑橘類を食べるときに、前歯で房の袋をかみ切っていませんか?長期にわたり、このような噛み癖があると、前歯の先端が溶け始めて、ずるずるにすり減ってきます。ご自分では、前歯が長期にわたり徐々にすり減ってくるので、気づくことはないので、気づいた時には、処置が困難をきたしてしまいがちです。
過ぎたるは猶及ばざるが如し
テレビの情報番組で、健康に良い食べ物、飲み物の紹介がされています。しかし、過度にある種のものばかり食すことは健康に害を与えてしまいます。アレルギー反応を起こすリスクも増えます。酸蝕症の予防、進行を止めるには、食し方を変えるしかないのです。溶けてしまった歯を再生することは、現代の歯科治療では不可能なのです。もし、ご自分が酸蝕症であると診断されたら、食生活改善アドバイスを受け入れなければなりません。健康に良いからと信じて続けていると、どんどん歯は溶けて行ってしまいます。
乳歯の酸蝕症
乳歯及び生えたての幼弱な永久歯のエナメル質は、大人の歯に比べて溶けやすいことが分かっています。よって、う蝕、酸蝕症のリスクも高いと考えられます。実験によると、歯の溶けやすさは、大人の歯の約6倍と報告もあります。
子供用の常用飲料は、㏗値の低くないもの、糖度の低いものが望ましいと考えられます。大人以上に気を付けないと、虫歯、酸蝕症のリスクは高くなるのです。お子さんに、長時間哺乳瓶やストローで酸性、甘味飲料を飲み続けさせることは、控えるように心がけてください。
最後に子供の味覚について
子供の味覚は、大人の味覚より敏感です。例えば、大人が好む香辛料、味のきついセロリ、ピーマン、ミョウガなど、幼少期は嫌いだったのに、大人になると食べられるようになるのは、味覚が鈍感になるからです。つまり、離乳期には調味料を使わず、薄味にするひつようがあります。甘味に対しても、大人より敏感ですので、できる限り糖度の低いお茶、糖度を薄めたイオン飲料、ジュースを飲むことをお勧めします。
以上、酸蝕症についてお話ししました。ご自分の歯で、酸蝕症かな?と心配になられたら、歯医者さん、歯科衛生士さんに遠慮なくご相談下さい。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子