こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 院長 富永佳代子です。前回に引き続き、部分入れ歯についてお話いたします。
保険治療の入れ歯と自費治療の入れ歯の違いは?
①機能性
保険治療の入れ歯であっても、「よく噛める」入れ歯を作製することは可能です。しかし、「さらに快適に、見ためも良く」となると、自費治療の入れ歯には勝てないのです。
保険の入れ歯の義歯床は、アクリルレジンというプラスチックで構成されています。プラスチックの入れ歯は、噛む力つまり咬合力がかかるとたわんで変形します。変形防止のため、つまり入れ歯が壊れるのを防止するために、レジンにある程度の厚みが必要になります。
お口の中の感覚は大変鋭く、例えば1ミリ厚みが違えば、お口の外の感覚では1センチ以上の違いに感じるほど、厚みに敏感です。厚みのある入れ歯は、お口の中で存在感が増し、舌や頬っぺたの粘膜には違和感の原因になります。
対して、自費の入れ歯では、義歯床の一部を金属にすることができます。金属にすると、アクリルレジンに比較して、強度、耐久性を向上させながら、厚みを薄くすることができ、お口の中のスペースがすっきりとして、快適さが増します。舌の動きや頬っぺたの動きもスムーズで、会話、食事の快適さが向上します。また、金属は熱を通すため、飲食物の温度も感じやすく、冷たいもの、熱いものを感じて、食事の楽しさはアップします。
また、長期使用の観点から考えると、金属の入れ歯は、剛性が増しているので、たわみや変形が少ないことから、粘膜の変形、骨の吸収が防止されます。針金がかかっている歯、咬合力を負担する粘膜、骨へのストレスが少なく、残存組織の健康状態の維持に役立ちます。
②耐久性
保険治療のプラスチックの入れ歯は、2~3年で劣化してしまい、作り変えを余儀なくされることが多く、金属の入れ歯は7~10年以上使用することも可能です。2年で何回も作り替えればいいわというお考えもあると思いますが、残存組織の健康維持の観点から考えると、保険の入れ歯は、針金がかかる歯も、徐々に状態が悪化していき、抜歯になることもあります。どちらが良いかは、皆さんの価値観によると思います。
③見た目の機能(審美性)
保険の入れ歯は、針金のデザインに制約があり、見た目に目立ってしまい入れ歯が入っていることが、他人にわかってしまう場合があります。あくまでも、「物を噛む、食べる」という機能性のみ重視されているからです。
自費の入れ歯では、クラスプを目立ちにくい形にしたり、クラスプのない入れ歯(コーヌス義歯)、クラスプの代わりに磁石を使う入れ歯、小さなパーツを使う入れ歯(アタッチメント義歯)などがあります。
使用する人工歯も、保険治療の入れ歯は種類が限られますが、自費治療の入れ歯の場合、歯のすり減りを防止するため、「金属の歯を奥歯に使用」、「非常に硬いすり減りにくい素材の歯を使用」することもできます。
近年、「ノンクラスプデンチャー」と呼ばれる、全くクラスプを使用しない特殊なレジンでできている入れ歯が脚光を浴びています。しかし、どのようなパターンの部分入れ歯にでも使えるものではありません。歯の抜け方によっては、保険の入れ歯よりも機能性が低くなり、変形、耐久性が低くなることもあります。必ず、主治医にご相談の上、ノンクラスプデンチャーを作製してください。
快適に使用するために
保険治療の入れ歯、自費治療の入れ歯に関わらず、歯と同じように入れ歯もメインテナンスが必要です。「留め金がかかっている歯は虫歯になっていないか?」「入れ歯にひびが入っていないか?」「粘膜と入れ歯のフィットに変化がないか?」「粘膜に傷ができていないか?」を定期的に観察する必要があります。入れ歯の汚れや着色もきれいにすることができます。定期的なチェックを受けることにより、長期にわたって快適な入れ歯ライフを送ることができるのです。
部分入れ歯の心配事、作り変えなど、当院にいつでもご相談下さい。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子