こんにちは。
大阪市福島区の歯医者「富永歯科クリニック」 院長 富永佳代子です。
今回は、「親知らずの虫歯」についてお話します。
職業柄、喫茶店 レストラン スポーツジムなどで、「今 歯医者さんに通院してるのよ。」「歯の治療中なのよ。」という会話が聞こえてくると、耳がその会話をとらえてしまって こっそり聞き入ってしまいます。その中でよく聞くのが「親知らずを抜歯をする予定なの。怖いわぁ。腫れるのかな?嫌だわぁ。」という会話です。親知らず抜歯=歯医者恐怖 というイメージがあることが、残念です。
「親知らず」の歯とは、
お口を開けて歯をみると、一番前に生えている歯(通称1番の歯)から数えると奥に向かって8番目にある歯 上下左右に1本ずつ合計4本あります。
昔の人は、顔の骨格がしっかりしていて、親知らずの生えてくるスペースがありましたが、現代っ子は、小顔なので生えるスペースがなく、正しい位置に生えてくることが困難な場合が多いです。また、親知らずの存在がない人も多くなってきています。中学生ぐらいに顎の骨のレントゲンを撮影すると、その存在の有無がはっきりします。
現代では、きれいな位置、並びに生えてくることはまれで、
・90度傾いて横に寝て生えている場合、
・斜め45度ぐらいに傾いている場合、
・骨の中に埋もれたまま一生生えない場合など、様々です。
成人してから生えてくるので、歯茎を破って生えてくる痛みが、「むずむず歯茎が痛い」「夜間に痛痒い」と訴えたりすることもあります。子供のころは、毎日が忙しく、好奇心の塊、歯に意識が集中する暇もなく、乳歯(子供の歯)から永久歯(大人の歯)に生え変わるのに「痛い感触、不快な感触」訴えることはあまりないです。
親知らずが、無事に生えてきても、奥に生えているので、「きれいに磨けない」「存在に気づいていないので、磨いていない」ため、虫歯リスクが高くなってしまいます。また、虫歯になると、早期発見が遅れがちで、気づいた時には冷たいもの、甘いもの、温かいものがしみて 大きな穴が開いてしまっていた!となり 歯科医院に行くと、「抜歯です」宣告を受けることになります。
親知らずの虫歯が、小さな場合つまり初期カリエスであれば、他の部位の歯と同様に、光重合型レジンやフッ素入りのセメントで治すこともあります。その場合は、ブラッシング指導を丁寧に行い、ご自分でしっかり磨ける習慣を身に着けてもらうようします。それができないと、再度虫歯になってしまい再治療が必要になります。奥に生えているので、治療を行う側の歯科医は、「器具が届きにくい、見えにくい」、治療される側の患者さんは、「大きなお口を長時間開ける苦痛」、「虫歯が進行していると回数がかかる苦痛」があるので、ある程度の大きさの虫歯になると 親知らずの治療は、第一選択が「抜歯」となります。
そして、親知らずの虫歯のために、その手前7番目の歯が虫歯になってしまうことがあります。この場合、7番目の歯の虫歯の治療を優先するために、親知らずを抜歯することがあります。理由は、斜めや水平に生えていて、その存在が邪魔になって、7番目の歯の治療ができなくなることがあるためです。
ただし、抜歯をするかどうか決定する権利は、ご本人にあるので、抜歯が第一選択治療と説明しますが、決して強制しているわけではありません。どうしても、ご本人に親知らずを残したい意向があり、可能であるなら、神経処置をして虫歯治療をする場合もあります。しかし、予後(将来的な歯の健康状態)は良好といえない可能性は高いと思われます。
というわけで、親知らずに関しては、抜歯処置が多く、世間話で「抜歯の恐怖」内容が多くなり、残念なことにイメージが悪くなりがちです。しかし、抜歯処置になるには、それなりに理由があることを、ご理解下さい。
以上、今回は「親知らずの虫歯処置」のお話でした。次回は「上の親知らずの抜歯」のお話を致します。
院長 富永 佳代子