こんにちは、大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。皆さん、歯医者さんに検診などで行かれたとき、「この親知らずは、抜いたほうがいいですね。」と言われたことがないですか?「痛くないし、腫れることもないし、このままでいいよね」なんて、放置していることもあると思います。しかし、そのまま放置していると、後々、問題が出てくることがあるのをご存じですか?今回から何回かに分けて、お話していきます。
なぜ親知らずというのでしょうか?
親知らずの正式名称は「第三大臼歯」です。つまり、「三番目には生えてくる大臼歯」です。ニックネームが「親知らず」=親が知らないうちに生えてくる歯ですね。親知らずが生えてくるのは20歳代です。子供の頃は、親が子供の口の中を見て、歯が生えてきたかまめにチェックしますが、大人になってくるとチェックしませんよね。なので、「親知らず」というのです。「智歯」の名称もありますが、英語名が「wisdom teeth」=知恵がついた頃に生えてくる歯という意味です。
どうして親知らずの抜歯を勧められるのでしょうか?
歯医者さんが親知らずの抜歯を勧める場合、今は自覚症状がなくとも、将来的に悪さをする可能性が高いと予知しているとお考えになってください。決して、何でも抜歯をしましょうと言っているのではないのです。永久歯の中で、最後に20歳代に生えて来ることが多い親知らず。まっすぐに生えてきたなら、何ら問題はありません。しかし、現代人は、昔の日本人と違い小顔で顎が小さいため、親知らずが、半分埋もれて生えている(半埋伏)人や、傾いて生えている人が、大半を占めています。噛むという機能も果たさず生息している親知らずは、衛生状態が悪く虫歯になりやすく、また歯茎に細菌が感染して、炎症を起こしたり、歯並びに影響を及ぼすこともあります。また、全身の健康状態にもかかわることがあります。
歯医者さんが、親知らずの抜歯を勧める理由はここにあります。今、痛みがなくとも、将来的に親知らずは悪さをする可能性を、みなさんにお伝えする義務が、私たち歯科医にはあります。決して、抜歯が好きだから何でも抜歯するのではないのです。基本的コンセプトは、一つでも多くの歯を残すことを長期に残すことが大前提です。
抜いたほうが良い親知らずとは?
どのような場合親知らずを抜いたほうが良いのでしょうか?
①隣の歯を虫歯にしている場合
親知らずが傾いて生えていて、手前の歯(第二大臼歯)と接触しているところが、虫歯になってしまいます。親知らずが接触しているところは、食べかすが挟まりやすく、歯磨きしてもとれにくく、虫歯リスクが他の歯よりもアップします。また親知らずも同時に虫歯になっていくことが多いです。第二大臼歯(7番目の歯)は、咀嚼に大事な歯で、この歯を失うと咀嚼機能が低下してしまいます。また、虫歯の治療をしても、親知らずが傾いて生えているため、虫歯リスクは低下せず、再発可能性が高いのです。
②歯並びに影響を与える場合
横に倒れた親知らずが、第二大臼歯の側面にぶつかっていると、第二大臼歯を押してしまい、押された第二大臼歯が第一大臼歯をおしてしまい、その歯がまた前の歯を押して、、、と将来的に歯並びが悪くなる可能性があります。
③隣の歯の根っこを失わせる場合
横に倒れている親知らずが、第二大臼歯の根にぶつかり、根の吸収を起こす場合があります。この場合、根の吸収が起こった歯は、残すことが不可能であり、抜歯になります。根の吸収が少ない場合は、親知らずを抜いて第二大臼歯を助けることができます。根の吸収がひどい場合は、抜歯したことにより、親知らずが生えてくることもあります。患者さんは、自覚症状がないため、レントゲンを撮影しないと、わからない症状です。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子