こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。医科や歯科の情報は、日々の研究によってどんどん変わっていきます。昨日まで正しいとされてきたことが、今日からは間違いでした。ということは、頻繁にあります。今回から数回にわたり、お口にまつわる最新情報をお届けします。
虫歯の原因は砂糖?
昭和の時代は、砂糖=虫歯の原因と考えていました。令和の時代になって、虫歯原因菌は、発酵性糖質つまり「ショ糖」「ブドウ糖」「果糖」「調理でんぷん」を摂取して酸を産生する(歯を溶かす)と考えています。つまり、ペットボトル飲料水に含まれるブドウ糖、果物に含まれる果糖、調理でんぷんは、米や芋、小麦粉などを熱と水分を加えて調理したものと考えます。エナメル質う蝕になりやすい順は、ショ糖>ブドウ糖、果糖>調理でんぷんの順で、やはり砂糖は一番リスクが高いです。
虫歯原因菌に対して、天敵の善玉菌がいる?
昭和の時代には、解析できなかったお口の中の細菌叢が、令和の時代になって解析できるようになりました。歯肉縁上プラーク(見えている部分の歯に付着しているプラーク)には、虫歯菌を攻撃する物質(過酸化水素、バクテリオシン)を産生する善玉菌やアンモニアを出して酸を中和する善玉菌の存在が判明しています。このような善玉菌が多いプラークは、虫歯を引き起こしにくいと考えます。
虫歯の原因菌はお母さんからうつるの?
昭和の時代から現在に至るまで、虫歯菌は、1歳半から3歳ぐらいまでの期間に、両親から特に母親から伝搬すると言われています。虫歯予防には、細菌の母子伝播を避けるため、食器を共有しないことなどにより、大人の唾液が幼児のお口の中に入らないようにすることを、大事なこととしてきました。また、両親の虫歯治療と口腔清掃により、虫歯菌の量を減らすことが大切とされています。これは、定説であり、令和の時代でも変わりません。しかし、現在では、必ずしも両親だけではなく、祖父母や兄弟姉妹、友人からも伝播すると考えています。また、ミュータンス菌だけが、虫歯を引き起こすのでないとわかっているので、虫歯を引き起こす細菌すべての伝播を防ぐことは困難であること、食事指導、歯磨き指導、フッ化物の使用で、虫歯の発生が予防できるので、神経質にならなくてもよいと考えます。感染予防に気をつけながら、親子関係を大切にしてください。
遺伝的に虫歯になりやすの?
昭和の時代は、虫歯の発生は、歯の質、細菌、糖質、および時間の4つの輪とされており、遺伝に関しては不明でした。令和の時代になり、唾液によるゲノム遺伝子解析で、虫歯のリスクに関係する遺伝子が報告されています。つまり、虫歯になりやすい人が存在するということです。
虫歯は治る病気なの?
昭和の時代は、虫歯になったら歯医者さんに行って、「削って詰める」ことにより、虫歯が治ると考えていました。「虫歯は治る病気であり、歯科医院は歯が痛くなったら行くところ」でした。
令和の時代の考え方は、違います。病気治療は原因を除去することです。虫歯治療でも、同じ考え方であり、虫歯で開いた穴を詰めることは、原因除去ではありません。虫歯の原因は、酸を出すお口の中に常にいる虫歯菌が原因です。この原因を0にすることは不可能なのです。虫歯治療とは、虫歯ができるお口の中の環境を改善し、できる限り虫歯にならないように口腔環境を管理することなのです。そのために定期的なお口のメインテナンスが重要であり、虫歯予防、歯周病予防の衛生処置が重要と考えています。
次回も、引き続きトピックを紹介していきます。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子