こんにちは。大阪市福島区の歯医者「富永歯科クリニック」 院長 富永佳代子です。今回から、舌についてお話します。
以前、大阪出身の女性タレントの方が舌癌を公表された時に、多くの方が、ご自分の舌は大丈夫か?と心配され、歯科医院 口腔外科に駆け込んだことがありました。鏡でご自分の舌をまじまじと見つめると、「こんな形?色?表面は正常なのか?」と心配になったと、何度も相談を受けました。
舌の働き
舌は、食べ物を消化させる最前端部にある臓器として、歯と共に重要な役割を担っています。食物と唾液を混ぜあわせる咀嚼や、かみ砕いた食物を食道へと送り込む嚥下(えんげ)を行う器官です。さらに味を感じ取る味覚器、発声の調節の役割も担っています。日頃は意識することなく、食事をして、おしゃべりをしていますが、舌の機能が無ければ、日常生活にかなりの支障をきたすことになります。
舌の表面は?
舌を鏡で見てみましょう。何だか小さなブツブツが表面にたくさんあります。この突起は舌乳頭と言います。舌乳頭には、4種類あり、舌の場所によって、形、色が違います。舌の表面の形と色は、西洋医学、東洋医学を問わず診断の補助手段として、有効活用されてきました。皆さんも、日々観察してみてください。睡眠不足、消化器疾患、口呼吸、貧血など、状態によって、舌の表面は変化していきます。
舌苔とは?
舌の変化で、一般的によく見られるのは、舌苔(ぜったい)です。舌苔とは、口の中の剥がれた上皮、白血球、口の中の細菌が唾液の成分であるムチンと共に舌の表面の乳頭に、苔状に引っ付いたものです。舌苔の付着の原因として、消化器疾患、睡眠、昏睡、口腔内疼痛疾患、舌の神経疾患、ビタミン欠乏、口腔乾燥、抗生物質使用、アレルギーなど、多くの原因があります。また、舌苔の量と口臭の強さは関係していると報告されています。舌苔は白色、灰白色、黄色、褐色など様々な色があり、飲み物、食べ物、喫煙の影響も受けやすいのです。舌が黒い!とびっくりしたら、実は舌苔の上に喫煙のニコチンの色がついていたということもあります。
舌苔と口臭の関係
舌苔の量が多く厚みがあると、口臭の強度が増す場合が多いのですが、一概にそうとは言えない場合もあります。口臭の強度は、舌苔量だけではなく、お口の中の細菌量、細菌による舌苔の質的な変化に関係していると考えられます。しかし、舌苔の量は少ないほうが清潔度は高いので、日ごろの清掃は大事です。
舌清掃の必要性
舌苔は、角化上皮と細菌から構成されています。簡単に言うと、「剥げた皮のかす」と「ばい菌」が混ざったものが、舌の表面についているイメージでしょうか?舌苔がついていても、不快でなければ差し支えないですが、口臭などの不快症状があるなら、皮膚についた垢を洗うのと同じように時々舌苔を掃除することは必要でしょう。3日から7日で舌苔の量が増加するので、2,3日に一回の清掃が妥当と思います。
舌ブラッシングの方法
舌苔には、唾液が多い人で多くみられるブラシでこすれば簡単に取れるサラサラタイプと、唾液が少ない人や、唾液がネバネバの人に多くみられる、何度もこすらないと取れないねっとりタイプがあります。
舌清掃道具は、多種販売されていますが、健常者ではシンプルなブラシタイプがいいと思います。柄が短く、ブラシのヘッド部分の厚みがない方が、口の奥まで入りやすく、嘔吐反射(オエッととえづく)が起こりにくく楽に清掃できます。
洗面台の前で、舌を前に出して、息を止めながら数回行ってください。刺激になるので歯磨き粉は必要なく、舌ブラシはよく洗ってください。最初は変化を理解するために、左右半分ずつ磨いてはいかがでしょうか?
注意点は?
舌ブラシは細菌がつきやすいので、1~2カ月で交換、1日1回歯磨きの時に舌の表面を観察、お掃除の前後の舌表面の変化を観察してみてください。神経質に歯磨きする方は、舌もこすりすぎて傷つけてしまうこともありますので、注意して下さい。舌苔の量と日々の体調との関連を意識することで、よりよい生活に繋がることと思います。気になる方は、医院でご質問下さい。
富永歯科クリニック 院長 富永 佳代子