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歯周病と全身疾患 Part4

2021年10月29日

こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 院長富永佳代子です。前回に引き続き、歯周病と体の病気についてお話します。

糖尿病

糖尿病はすい臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが阻害される病気です。インスリンが正常に働かないと、血液中のブドウ糖=血糖を全身の細胞にうまく取り込めなくなります。糖尿病になると血液中のブドウ糖を処理しきれなくなって、血糖値が上がります、血糖値が上がった状態が長く続くと、全身の血管に負荷がかかってボロボロになり、目の網膜、腎臓、足の毛細血管、大動脈などに障害を引き起こします。最悪の場合、失明したり、腎不全になり人工透析が必要になったり、脚に潰瘍や壊疽が起こり切断が必要になることもあります。また、脳の血管がボロボロになると、血管性認知症の原因になる場合もあります。進行すると非常に恐ろしい糖尿病ですが、歯周病が関連していることが明らかになっています。

歯周病菌が出す毒素の影響でつくられるサイトカインとういう炎症性物質が、血管を通じて全身にまわると、インスリンが効きにくくなって、糖尿病が発症、進行しやすくなります。米国の調査によると、歯周病患者が糖尿病になる確率は、歯周病でない人の約2倍と報告されています。

また、今は糖尿病を発症していなくても、歯周病があれば、糖尿病予備軍の可能性が高いことも報告されています。反対に、歯周病にかかっている糖尿病患者に対して、歯石除去歯磨き指導を行うと血糖値が低下することも報告されています。

近年、歯周病と糖尿病の関連性が医療界に浸透してきて、医科と歯科が連携して患者の治療にあたる医科歯科連携も浸透してきました。大学病院などでは、入院患者さんの口腔ケアを重視、歯科医師、歯科衛生士により口腔ケアを行ってから、外科的処置つまり手術を行うようになってきています。

脳血管障害(脳卒中)

歯周病が引き起こす全身疾患に、脳血管障害(脳卒中)があります。簡単に言うと。脳の血管が詰まったり、切れたりする病気です。日本のとある病院の報告で、脳卒中で入院している患者さんは、歯周病が重度であるとのことです。

なぜ、歯周病が脳卒中のリスクを高めるのでしょうか?

やはり炎症性物質のサイトカインが関係しています。サイトカインが、全身をめぐると、全身の血管内で炎症が起こります。炎症がひどくなると、動脈の内壁が厚く硬くなって、血管が詰まりやすくなったり、切れやすくなったりします。これを動脈硬化と言います。動脈硬化が進行して脳の血管がボロボロになると脳卒中が起こりやすくなります。

脳卒中は、日本人の要介護状態を引き起こす第一位です。歯周病の人は、そうでない人と比較して、2,5倍も脳梗塞になりやすいと言われています。

心筋梗塞

歯周病菌が原因で心疾患にもかかりやすいこともわかってきています。心筋梗塞がその代表です。心筋梗塞の原因は、心臓を取り巻く冠動脈が動脈硬化を起こすことです。動脈硬化を起こす原因は、脳卒中と同様で炎症性物質サイトカインが心臓に流れ込むことです。その結果、冠動脈が傷つきボロボロになるのです。歯周病患者さんは心筋梗塞を含む心血管疾患にかかるリスクは1,15~1,24倍と言われています。

歯周病は慢性疾患です

歯周病とは、慢性炎症疾患です。口の中で慢性的におきている炎症が、脳の血管に到達すると脳血管疾患、心臓に到達すると心疾患の原因になります。慢性炎症疾患である歯周病は、血管を通じて常に全身に炎症をまき散らすのです。

いかがでしょうか?たかが、お口の中の歯の病気、命にかかわることがないと思っているかもしれませんが、歯周病は、全身疾患と密な関係になります。「歯茎から出血している」「歯がぐらぐらと動いているのに、放置している」と、徐々に全身の状態まで、悪影響を及ぼすことになります。そのためにも、せめて最低1年に1回は、歯科受診を行い、歯周病対策を行ってください。

富永歯科クリニック   院長 富永佳代子

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