こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。中高年に多い歯の根のむし歯=根面カリエスをご存じですか?この根面カリエスが、最近増加傾向になっており、新たな虫歯として着目されています。
根面カリエスとは?
加齢とともに増加傾向にある歯茎の下がり。30代から始まり、40代では8割近くの人に歯茎の下がりが認めまれます。歯茎が下がると、歯の根っこ(根面)が露出します。この根面は、エナメル質に比べて酸に溶けやすく、虫歯になる危険性が高いのです。酸性の食べ物は、とても多いですよね。トマト、お酢を使ったお料理、果物など美味しいのですが、リスクは高まります。飲み物も同様に、酸性のものは美味しいけれど、虫歯リスクは高まります。50歳以上の2~3割の方が、根面のむし歯になっていると言われています。
根面のむし歯が厄介な存在なのは、たくさんの歯に同時期に虫歯になることにくわえ、進行が遅くあまり痛くないので、虫歯になっていることに、気づきにくいことです。つまり、気づいた時には、虫歯が進行して重症化して治療が困難になるのです。つまり沈黙のむし歯なのです。歯の根元をご本人で、鏡を使ってみるのも困難なので、自己申告される方は、めったにおられないのが実情です。つまり、根面カリエスは、歯科医院でみつかることが多く、定期的に歯科検診をしていないと、進行していきやすい虫歯と考えます。
予防方法は?
根面の虫歯予防に効果的な方法は、飲食直後に飲食物や虫歯菌の出す酸で、お口の中の状態が酸性になっているのを、出来るだけ早く中性に戻すことです。「食後5分以内にブクブクうがいする」ことを習慣づけて「食後の美味しいお口の余韻」を楽しまないことです。(少し残念ですが、)そして、「歯の間に物が挟まっていると気持が悪い。早くブクブクうがいをして、お口の中をすっきりしたい」という感覚を身につけることが、重要です。
歯磨きの仕方は?
幼少の時から歯磨き習慣がついていると、歯冠とよばれるエナメル質の部分を歯磨きする習慣がついているはずです。しかし、年齢を重ねるにつれ、歯ぐきが下がってきて歯の根が露出しても、その習慣があまり変わらず、歯冠部だけを磨いて終わりという方が多いです。そこで、普段どおり、歯冠部を磨いてから、歯と歯茎の境目を磨く、二段階方式磨きをすると効果的に歯磨きができます。この歯磨き方式にすると、歯ぐきのマッサージを同時に行えるので、歯周病予防にもつながります。使用する歯磨き粉は、高濃度フッ素配合(1450ppm)のものをお勧めします。歯磨き粉の中に、つぶつぶの粒子の入ったものは、着色予防には効果的ですが、歯が削れていくリスクが高くなるので、根面カリエス予防には、お勧めしません。毛先の硬い歯ブラシやゴシゴシ磨きも禁止です。歯ぐきへの刺激が強すぎて、かえって歯ぐきが下がる原因となります。
加齢により、歯ぐきが全体的に下がってしまった場合、元に戻す方法は、残念ながら現在のところありません。「最近歯茎が下がってきた」と感じたら、歯科医院の受診をお勧めします。長年の歯磨き習慣の見直し、虫歯のチェック、歯周病のチェックをしてもらい、それぞれの治療を行って、これ以上の歯茎の下がり、根面虫歯の発生を予防していく必要があります。
人生100年時代、楽しくおしゃべりをして、美味しく食事をする。お口も体も元気で健康でいることが、幸福=口福、健康=健口につながります。歯茎の下がりが、気になったら、ぜひ歯科受診をお考え下さい。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子