こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長富永佳代子です。今回は歯ぎしり、食いしばりに関して、歯科での対策についてお話します。
歯科での対策
昼間のTCHに関しては、意識することで改善可能です。夜間の歯ぎしりについては、良質な睡眠をとることで、ある程度コントロールできます。可能な対策が、いろいろあるので、できることは全て行うことをお勧めします。
マウスピース
最も有効な手段として、就寝時のマウスピースの装着です。マウスピースは、基本的に上あごの歯にのみ装着します。マウスピースを装着することにより、約9割の方は、一旦歯ぎしりが止まります。マウスピースに慣れてくると、再度歯ぎしりが始まりますが、マウスピースが歯にかかる力を分散させてくれます。直接歯に力がかからないので、歯が削れることは防止でき、代替えとしてマウスピース自体が削れていきます。決して、マウスピースを装着することにより、歯ぎしりが止まるわけではないことをご理解ください。
マウスピースは保険治療で作成でき(3割負担で約5000円程度)、素材は入れ歯と同じで、色は透明なプラスチックを使用します。ソフトタイプとハードタイプがありますが、ハードタイプをお勧めします。柔らかいタイプは修理ができないのですが、硬いタイプは修理可能、かみ合わせ調整もできるため、長期に使用が可能です。
欠点は、就寝時に異物を歯に装着する違和感、気持ち悪さがあります。違和感から、「装着できない」「睡眠が十分にとれない」などの不満が生じ、装着を断念する方もおられます。
被せ物の材料の選択
今後被せ物の治療を検討される方は、耐久性の高い材料、治療方法を選択すると、被せ物の破損、歯根破折が起きるリスクを減らすことができます。
白い被せ物を検討される方は、ジルコニアをお勧めします。ジルコニアは、硬くて割れにくいのが利点です。最近は、色調や透明性に優れたフルジルコニアが開発されているので、見た目が気になる前歯でも満足いく結果が得られます、一方、従来からある陶材の被せ物は、色はきれいで透明性もあり審美的には優秀ですが、歯ぎしりをする方には、破折の観点からお勧めしません。
ファイバーポスト
神経を取った歯に歯根破折リスクを減らすために、接着性レジンとファイバーポスト(グラスファイバー製の芯棒)が、開発されました。歯ぎしりの力を吸収するので歯根破折のリスクが減少します。ただし、マウスピースの夜間装着は、行ってください。歯科材料は研究開発が進み、今後も発展改良が期待されます。ご自分に症例にあった方法を、歯医者さんと相談されて、治療方法を決めていきましょう。
定期的メインテナンスの必要性
歯を失う二大原因は、虫歯と歯周病です。しかし、近年、TCHや歯ぎしりでの過剰な力が、歯の経年劣化を加速させていくことが、わかっています。20代、30代では感じなくとも、加齢とともに、歯を失う原因として、浮上してきます。特に60代以降、歯の本数が減少すると、残っている歯に負担が増えてきて、問題が生じてきます。
子供の頃から「お口は、ちゃんとつむりましょう。」と躾られてきますが、これは「上唇と下唇を閉じる」ということであり、決して「上下の歯を接触させる」ことではありません。「過剰な力」の為害性にきづいて、対策を取りましょう。そのために、かかりつけの歯医者さんを持ちましょう。応急処置だけのその場限りの治療を続けないで、普段から困っていることを相談して、なぜ被せ物や詰め物がすぐに外れたり、壊れるのか対策をしていきましょう。定期的に、歯医者さんに通院されている方でマウスピースをお持ちでしたら、毎回ご持参ください。マウスピースの破損やかみ合わせのチェックして、調整をしてもらいましょう。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子