こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長富永佳代子です。今回から何回か分けて、「歯ぎしり・食いしばり」に関してお話します。
歯が悪くなる原因は、虫歯と歯周病です。しかし、それだけではありません。「詰め物や被せ物がよく壊れる」「はずれる」「歯が割れたり欠けたりしやすい」と、感じてないでしょうか?これは、もしかしたら歯ぎしりや歯の接触癖(TCH)が原因かもしれません。
歯ぎしりの過剰な力が問題
歯を傷める過剰な力には、二種類あります。
歯ぎしり
歯ぎしりは、睡眠中に無意識に行います。起きている時と違って、力のコントロールが効かず過剰な力が歯にかかります。睡眠中のほとんどの時間は、上下の歯は接触していません。歯ぎしりをしていたとしても、一時間に5~6回程度の短時間にすぎません。しかし、この力がかなり大きく、下あごをギリギリとスライドさせ、歯を揺さぶるため短時間であっても大きな影響を及ぼすことになります。このため、被せ物が壊れたり、ご自分の天然歯を折ってしまうことがあります。一説には、60キロぐらいの力が出る場合もあると言われています。歯に60キロの体重の人がのっていることを想像してみてください。
TCH
TCHとは「Tooth Contacting Habit」と呼ばれる、「上下の歯を無意識に接触させる癖」です。通常、上下の歯は、食事をしたり重いものを持つ時など一時的に噛む以外、本来は離れているものです。しかし、歯を接触させる癖のある方がおられます。例えば、パソコン業務、お料理を作るため下を向いている時などです。無意識にしていることが多く、気づいていない方が多いのです。歯にかかる力は弱いのですが、長時間加わることによって、顎関節症になったり、歯や入れ歯をいためてしまうことがあります。治療したところが壊れてしまうと、同じ歯医者さんに相談しないで、転々と歯医者さんを変える、応急処置で済ますなど、根本的な原因がわからないまま、治療の繰り返しをしていませんか?もし、詰め物、被せ物がよく壊れる、歯が割れたり、削れたりしやすいと感じているのであれば、かかりつけの歯医者さんに相談しましょう。
自分でのチェックポイント
歯が削れていませんか?
強い力で上下の歯をこすりあわせることで、歯が咬耗(こうもう)つまりすり減ってしまい、歯の中にある神経の部屋が露出します。症状としては、歯ブラシでこするとピリピリしたり、冷たいもの、熱いもので痛みを感じます。歯を目で見ると、すり減っているのがわかります。
舌に跡かたがついてないですか?
上下の歯を接触させていると、舌が緊張して歯に押し付けられて跡かたができます。鏡で舌を見てみましょう。舌の形が綺麗な楕円形ではなく、なみなみと波打ってませんか?
歯が動いていませんか?
強い力で下あごにつきあげられた上の前歯が、前にせり出していませんか?これは、歯周病に罹患して、歯を支える骨が、少なくなっている方に多い症状です。
骨隆起がありますか?
強い力が歯にかかり、それが骨に伝わることにより、顎の骨(歯槽骨)がこぶ状にもりあがります。上顎の骨の真ん中や下顎の内側に、もこもこと骨が盛り上がってこぶのようになっていませんか?
歯の被せ物への影響
食いしばり、TCHによって、人工物である被せ物、詰め物、入れ歯に様々な支障が出現します。
被せ物が欠ける
歯ぎしりの強い力で、金属の被せ物に比較して、セラミックの被せ物が割れる危険性あります。
インプラントの被せ物が欠ける
インプラントは、天然歯と比較して、歯根膜のクッションがないので、強い力がかかると、上部構造(被せ物)が欠けるリスクが上がります。
被せ物が外れる
歯ぎしりで、単一の被せ物が外れたり、土台の金属ごと外れることがあります。また、ブリッジの場合は、知らない間に片方だけ被せ物が外れている場合もあります。連結型であるブリッジの場合、歯ぎしりの影響力を受けやすくなっています。
このように適切な対策を取らないと、歯に大きな影響を及ぼすことがあります。次回にお話は続きます。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子