こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。家庭で、病気の方のケアを行っているご家族の方は、日々お口の中のケアも行っていることと思います。口腔保湿剤の使い方がわからない、何を使ったらいいのか?など、疑問に思っていることもあると思います。今回は、口腔保湿剤の使用時の疑問についてお話します。
口腔保湿剤の使用するタイミングは?
基本的に製品の使用方法に従うことが前提です。口腔乾燥がひどく、口腔ケアにより傷ができたり、粘膜が剥がれたりする場合は、ブラッシング前後ともの使用をお勧めします。そのようなリスクがない場合は、ブラッシング後の使用が効果的です、ブラッシングによって、歯垢や汚れを歯の表面から取り除くことができますが、同時にお口の中の水分も取り除かれてしまうため、ブラッシング後に口腔保湿剤をを使用することにより、口腔内の水分を保持することが可能となります。
口腔保湿剤以外に乾燥を防ぐ方法は?
基本的には適宜の水分摂取は必須です。特に夜間は、長時間にわたって保湿ができないため、自立している人であれば、枕元にペットボトルの水かお茶(糖分の含まれないもの)を置いて、口を潤すことをお勧めします。また、部屋を加湿する、鼻呼吸をする、喫煙やアルコールを控えることも、乾燥を防ぐことに繋がります。
誤嚥のある方への使用注意
誤嚥は、口腔保湿剤の粘度や使用料、患者さんの姿勢によって、起こりやすさが変化します。まず、少量から使用するようにして、飲み込める粘度のものを選択しましょう。基本的には、とろみがついた状態と同じ口腔保湿剤の使用を勧めします。ジェルタイプは、時間が経つと、餅状になることがあるため、大量に使うことは控えてください。飲み込みに問題ない人は、推奨量を使用して下さい。誤嚥しやすい人は、液状のスプレーやリキッドタイプを使用するときには、慎重に誤嚥しないようにしてください。
日常生活での注意点
食生活
口腔乾燥の対策では、水分の多い食事、柔らかい食べものと考えがちです。しかし、水分の多い食事や柔らかい食べ物を選びすぎると、噛む回数が減ってしまい、咀嚼機能の低下や、唾液分泌量の減少に影響を及ぼします。咀嚼回数を増やし、噛みごたえのあるものを取り入れた食事を考えることも必要になります。
水分補給
高齢になるほど、体内の水分量は減少します。まずは水分補給を勧めましょう。しかし、水分を摂りすぎると胃の調子が悪くなる、お腹がいっぱいになって、食事が食べられなくなる、などの理由から、敬遠する方もおられます。このような場合でも、うがいで口腔内を潤すことでも、充分対策になります。
洗口液
市販の洗口液(マウスウォッシュ)には、20%のアルコールが含まれています。アルコール成分は、お口の中の粘膜に刺激になるほか、乾燥状態が上がってしまうので、頻繁な使用には注意が必要です。ノンアルコールタイプの洗口剤の使用をお勧めします。
歯磨剤
市販の歯磨き粉の中に含まれている発泡剤(ラウリル硫酸ナトリウム)は、お口の中の粘膜を保護する唾液成分ムチンを破壊し、口腔乾燥を助長すると言われています。口腔乾燥の方には、発泡剤無配合の歯磨剤をお勧めします。
唾液腺マッサージ
唾液腺マッサージを、毎日行うのは少し難しいとは思いますが、左右の耳の前(耳下腺),頬(顎下腺)下あご首の前(舌下腺)を指で押したり、円を描くように回したりを、4~5回マッサージとして行うことで、唾液の分泌促進に繋がります。
口腔乾燥はオーラルフレイルの重要なサインです。口腔機能低下の予防のために、口腔乾燥があれば、かかりつけの歯科医院での相談をお勧めします。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子