こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 院長富永佳代子です。診療室で患者さんからのご相談で「最近頬っぺたの内側をよく噛みます。どうしてでしょうか?」と質問されます。原因として、上下の歯のかみ合わせの位置関係、入れ歯の人工歯の形など明確な場合が多いのですが、原因に「頬っぺたのお肉のたるみ」があります。」つまり加齢によるたるみです。現在、コロナ禍によりマスク着用が続いており、「おしゃべりする時間が減少」「お食事も一人で食べる」「お口を動かす時間が減少」しています。つまり、お口周りの筋肉を動かす時間が減少していることを意味します。そのため、お口の中の粘膜もたるんでしまい、頬っぺたを噛んでしまうという二次被害がさらに起こるのではと考えています。加齢によりどのようなリスクがあるのでしょうか?
歯磨きについて
年を重ねていくにつれ、歯磨きが億劫になりませんか?とりあえず、歯ブラシでゴシゴシ磨いていればいいと大雑把になっていませんか?高齢になると筋力の低下により、今まで丹念にできていた歯磨きができにくくなります。歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス、歯磨き粉とたくさんの道具を使うことが面倒になりがちです。高齢者のセルフケアは、シンプルに!普通の歯ブラシが邪魔くさいのであれば、電動ブラシを使うのもOKです。疲れて歯磨きができないときは、せめてデンタルリンスでぶくぶくうがいをして就寝でもOKです。毎日100点満点のセルフケアを目指そうとしないで、シンプルにできることを心がけましょう。
歯肉の退縮
加齢とともに歯の周りの骨=歯槽骨が痩せてしまいます。そのため、歯茎が退縮して歯の根元が露出してしまいます。ご本人は、あまり気にしていなくても、症状として冷たいもので痛みを生じる知覚過敏、根面う蝕になってしまいます。原因として、長年のオーバーブラッシングによるもの、歯周病の進行、歯ぎしりによる骨吸収に伴う歯肉退縮などがあります。
唾液の減少
歯肉退縮に伴う根面う蝕は、唾液が十分出ていれば、虫歯菌の繁殖を抑えることができて、リスク回避できます。しかし、加齢に伴い唾液の分泌量が減少すると、お口の中の免疫機能が低下し、細菌感染のリスクが高まります。
唾液は、自浄作用、消化作用、抗菌作用、食塊形成作用、pH緩衝作用、粘膜保護作用、粘膜修復作用、再石灰化作用、潤滑作用と多くの仕事をしています。つまり、虫歯、歯周病だけでなく、多くの疾患リスクが高まります。
「口の中の渇きが気になる」「硬い食べ物が食べにくくなった」「義歯がすれて痛い」などの自覚症状があれば、歯医者さんに相談してください。唾液のケアは、食事指導、唾液腺マッサージで唾液分泌促進などがあります。また、補助剤として人工唾液、マウスリンスやマウスジェルを使用することもお勧めします。
舌苔
唾液分泌の減少に伴い、自浄作用が低下し、舌の表面が汚れやすくなります。舌苔(ぜったい)を放置することで、味が感じにくくなったり、味覚が変化することがあります。食事を楽しくするために、舌苔のケアはとても大事です。
ケア方法は、舌クリーナー、口中タブレットがあります。タブレットは、なめるだけでいいので、楽なケア方法ですね。舌クリーナーは、舌専用ブラシや歯ブラシで、歯磨きの後に舌をブラッシングするだけなので、難しくはないです。補助剤として、ジェル系の歯磨き粉を使用すると、簡単にケアでき、殺菌作用も期待できます。
日々のシンプルなお口の中のケアは可能です。個々人によって、ケアの方法、使用道具、使用補助剤は違うので、定期検診や虫歯治療での来院時に、歯医者さん、歯科衛生士さんに遠慮なくご相談ください。お口の中は、食事の栄養を取り込む玄関です。玄関に汚れがあれば、お部屋の中に汚れを取り込むことになります。健康な生活のために、シンプルで持続性のあるケアをしましょう。
富永歯科クリニック 院長 富永佳代子