こんにちは。大阪市福島区の歯医者「富永歯科クリニック」 院長 富永佳代子です。前々回の続きで、全身疾患(持病)をお持ちの場合の歯科治療の注意点をお話しします。
骨粗鬆症
高齢になると骨折しやすいことは、ご存じだと思います。転倒による足の骨、骨盤、背骨などの骨折、咳をしただけでも肋骨にひびが入ったりします。原因は、男女とも加齢による骨量の低下です。特に女性の場合は、閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の低下により男性より骨量の低下が、著しいことは明らかです。現代人は運動不足ですよね。これも原因に一つです。昔の女性は、畑仕事をし、便利な家電商品もないので家事も重労働でした。日常生活が運動になっていましたが、現代はウオーキング、水泳、ランニングなど運動を取り入れないと、筋力の低下、骨量の低下に繋がります。女性は、お肌の日焼けにも敏感で、紫外線対策をしていますが、整形外科医に、洗濯物を干すたった10分、日光に当たるだけで、骨量低下の防止になると言われました。少し意識を変えてみてください。
骨量が平均値より下がると、内科医、整形外科医から骨粗鬆症の薬を服用することを勧められます。ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)や抗RANKLモノクローナル抗体などの薬には骨を強くする作用があります。1日1回服用、1週間に1回服用、1カ月に1回服用、もしくは注射、6カ月に1回注射など、いろいろなタイプがあります。この薬を一定期間以上使用してる場合、抜歯やインプラント手術等の外科処置で顎骨壊死(がっこつえし)や炎症がひどくなる等の副作用が起こることがあります。ただし、適切な処置を行い、術後の経過管理を行うことで、副作用を抑えることもできるといわれています。
また、義歯を装着している場合、痛みを我慢していると粘膜が傷つき、そこから感染して顎骨壊死が起こることもあります。虫歯で穴が開いていたり、とがった金属の詰め物から傷ができ感染することもあるので、我慢して来院を控えることはやめてくださいね。顎骨壊死を起こすと、自然治癒することは困難で、骨の中から膿が出て止まらない、腐った骨ができてしまい外科的切除の必要性など治療が長くかかります。
服用前には、必ず歯科受診をして、抜歯しないといけない歯(長期的な見解から予防的抜歯になる場合も出てきます。)の処置、虫歯処置、歯周病治療を受けて下さい
薬物アレルギー、他のアレルギーなど
抗生物質 鎮痛剤の服用で、蕁麻疹、腹痛、下痢などの症状が出たことがある場合は、初診時に問診しますので、お知らせください。ご自分の体の情報は、必ずご自分で理解、伝えることが必要です。過去の服用で異常があった薬は、メモを取っておく必要があります。
麻酔の注射薬でアレルギーが出ることもあります。症状は、皮膚が赤くなる、血圧低下、呼吸困難、顔面浮腫などです。過去にこのような症状が出た経験がある方は、必ずお伝え下さい。
治療時に、治療にあたるスタッフは、ゴム手袋、ニトリル手袋を着用しています。ゴムアレルギーの方は、歯科治療時、顔に接触すると蕁麻疹、赤くはれるなどの症状が出るので、必ず私共に、伝えてください。この場合は、ニトリル手袋、ビニール手袋で対処可能です。
牛乳アレルギーがある方の場合、ある種のフッ素塗布の薬物が使えなくなります。特にお子様の場合は、注意が必要です。牛乳アレルギーの方も使用できるフッ素もありますので、ご相談ください。
ステロイド剤
ステロイドは副腎皮質ホルモンの一種で、様々な病気に使用されています。短期間の使用では歯科治療に問題はないのですが、長期にわたって使用している場合は注意が必要となります。特に抜歯等の外科処置後、感染しやすいリスクがあるので、抗生物質投与、傷口の洗浄来院回数を増やすなどの処置が必要となります。また、免疫力が低下するので、虫歯になりやすい、歯周病の悪化などの問題があるので、定期的な歯科受診を行い、予防処置を行うことが重要になります。
以上、全身疾患と歯科治療に関してお話ししました。歯医者受診時には、必ずお薬手帳、薬本体の提示をお願いいたします。必要なときは、内科等主治医との相談の上、歯科治療を行います。ご自身での自己判断による服用中止だけはくれぐれもしないでください。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子