こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長富永佳代子です。患者さんから、「インプラントは歯周病にかからないですよね?」という質問をいただくことがあります。確かに、インプラントは歯ではないので、歯周病にはかからないのですが、インプラントの周囲の歯肉、骨に炎症が起こることはあります。今回は、インプラント周囲の炎症についておはなしします。
インプラント周囲組織は?
インプラント周囲組織は、天然歯の周囲組織と違って、セメント質、歯根膜がありません。そのため、細菌に対しての防御力が低く、炎症が起こると天然歯の場合と違い、炎症の進行が早くなります。また、そのリスク因子として、口腔衛生状態の不良、咬合圧の過重負担、喫煙、糖尿病、歯周病の既往歴などが関係します。
インプラント周囲粘膜炎とは?
インプラント周囲粘膜炎は、炎症が歯肉に限られ、天然歯の歯肉炎と類似しており、適切なプラークコントロールにより、元の状態に戻すことが可能です。骨吸収はなく、歯科衛生士の指導により、改善が可能な状態です。
インプラント周囲炎は?
インプラント周囲炎は、周囲粘膜炎が進行し、骨吸収を伴い、治療に外科的処置が必要になる場合がおおく、治療の担い手は、歯科医師となります。だからこそ,そうなる前に、インプラント周囲粘膜炎の段階で、進行を食い止める必要があります。そのために、定期的なメインテナンス、定期検診が必要となります。
周囲粘膜炎を見逃さないために
では、どのようにチェックするのでしょうか?早期にインプラント周囲の炎症を発見するために、定期検診では、インプラント周囲の辺縁歯肉の出血の状態を検査します。以下のスコアのように判断し、異常があれば、改善するためにセルフケアの改善指導、処置方針を決定します。
スコア0 インプラントに隣接した粘膜縁に沿ってプロービング時出血なし
スコア1 孤立して出血点あり
スコア2 インプラント周囲辺縁に沿った線状の出血
スコア3 著名な出血
さらに、インプラント周囲にエアーを吹きかけてみます。健康なインプラント周囲組織は、タイトに引き締まり、エアーをかけられても動きはありませんが、炎症が進行してくると引き締まりが無くなり、インプラント周囲粘膜がひらひらと、インプラントから離れてしまいます。また、インプラント周囲粘膜を押さえた時に浸出液や膿が、インプラント周囲ポケットから排出されないかをチェックします。
セルフケアについて
日々の歯磨きの状態は、各人によって違います。歯科衛生士は、それぞれの患者さんに見合った、口腔ケアの仕方を考えます。そこには、患者さんの性格、歯磨きの技量を鑑み、長期間安定したプラークコントロールをしてもらう必要があります。基本的には、「シンプルがベスト」と考え、その患者さんにあった必要最小限の清掃器具を考え、使用できるように指導を行います。たとえば、高齢者や手の不自由な人には、電動音波振動歯ブラシを使ってもらうのも良いでしょう。歯磨き粉に関しては、インプラント表面を傷つけないように、研磨剤無配合のものを、またチタン腐食を起こすことのないフッ素無配合のものを選択するなど、口腔内の状態に応じた対応が必要となります。
セルフケアといえども、患者さんとの二人三脚が不可欠であり、常に高いモチベーションを持っていただけるように、口腔内の状態の理解とセルフケアの重要性をご理解いただくようにして、インプラント周囲炎の発生の予防に取り組んでいきます。そのため、定期的なメインテナンスの大切さをご理解ください。
富永歯科クリニック 院長 富永 佳代子