こんにちは 大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック 副院長赤野弘明です。前回に引き続き、「インプラント手術前にどんなことに気を付けたらよいか?」についてお話いたします。
今回は局所的問題についてです。
①骨の量がどの程度か?
インプラントとは人工歯根ともいわれます。歯根と骨は歯根膜という線維でつながっていて、抜く事ができます。インプラントは骨とくっ付かないと機能できません。つまり、残存骨の量がインプラントの太さや長さを決めます。インプラントのサイズは、直径4mm以上、長さなら8mm以上のものが基準と考えます。従って、骨の幅は7mm以上、解剖学的制限(上顎洞や下歯槽神経など)をふまえると10mm以上必要です。では、この骨量が残っていない時はインプラントができないのでしょうか?
安心してください。富永歯科クリニックでは、これより条件が厳しい場合でもGBR法(骨造成)という治療で、不足している骨を造成します。この治療が出来るかが、インプラント術者が初心者か経験十分かの最低限度の分かれ目です。
さらに治療スキルを必要とする自家骨移植、上顎洞底挙上手術も対応しております。この様な治療ができる歯科医院は、かなりインプラント治療の経験量が多いと思われるので、安心してインプラント治療が受けられると思います。
以前「歯を抜かないのが良いというのは本当?」でお話したことがあると思いますが、抜歯が望ましい状況にもかかわらず、いつまでも抜歯を拒否していると、インプラント治療を行う場合に必要な骨がなくなり、結局、GBR法を何回かする必要になる事も少なくありません。将来インプラント治療を考えられているなら、抜歯のタイミングはとても重要です。
②歯周病の治療はされているか?周囲に炎症などがないか?
歯周病の原因は、歯周病菌の感染による病気です。歯周病は、歯の周りの骨が溶けていく病気です。インプラントは人工物であるため、虫歯にはなりませんが、歯周病にはなります。これをPeri-implantitis(インプラント周囲炎)と言います。インプラント表面に歯周病菌が付着し、放置しているとインプラントの歯周病になります。インプラントの手術の前も歯周病菌の量を減らす必要がありす。
歯周病がある方は、必ずインプラント手術の前に、歯周病治療を行い、口腔内環境を改善して、インプラント手術を行います。
また、インプラント予定部位の周囲に炎症や膿が溜まっている時は治療が必要です。膿とは細菌と白血球の死骸からできていて、インプラントに感染が及んでしまう可能性もあります。
インプラントの手術の前に、インプラント埋入予定部位の付近に炎症や膿が確認されたら、必ずその治療を先行する必要があります。
③噛み合わせに大きな問題がないか?
インプラントは骨と結合しとても頑丈です。特に顎のズレがある場合は、インプラントは強固に骨にくっ付いているので、インプラントと咬み合う対合の歯にダメージを来す場合があります。特に歯周病にかかっている歯に、過剰な負担がかかる場合があります。これを外傷性咬合とよんでいます。逆に、対合の歯がしっかり強固であれば、インプラントの被せ物が破折したり、アバットメント(インプラントの支台部分)を固定しているネジが破折したり、インプラントそのものが壊れる場合もあります。
噛み合わせに問題がある場合は、「被せ物が頻繁に外れる」「顎関節症がある」「噛む位置が良くわからない」「詰め物が良く外れる」「歯根が破折する」などの問題が生じる場合が多いです。天然のご自分の歯であってもトラブルが起こるので、インプラントでも同様にトラブルが発生します。
インプラントの治療の前に、顎位(顎の位置)を正し、歯の位置や歯の並びを整え、干渉のない顎の動きが必要です。
これらの問題も考慮して、治療の計画を進める事が必要です。歯がなくなった原因が、噛み合わせにある場合も少なくありません。
全体的・局所的問題点を解決してようやくインプラント治療が可能となります。
歯を失った場合、少しでも早く歯を入れたいと思います。しかし、これらの問題点を解決することなく、インプラントだけ行ってもよい結果が得られません。
必ず、事前診査と初期治療は重要で、このような治療をしっかり行ってくれる医院こそが安心してインプラント治療を任せられる医院ではないでしょうか?
副院長 赤野 弘明