こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長 富永佳代子です。前回に引き続き、抜歯、インプラントなどの外科治療を受けるときに、注意が必要な病気やお薬についてお話します。今回は、骨粗鬆症のお薬について、ご紹介します。
骨粗鬆症の薬
骨粗鬆症とは、どのような病気でしょうか?
骨は破骨細胞(はこつさいぼう)による骨吸収と骨芽細胞(こつがさいぼう)による骨形成が、繰り返されることによって、日々新しい骨が生まれ変わる骨代謝が行われています。通常は、骨吸収と骨形成のバランスは均衡がとれていますが、このバランスが崩れて骨吸収の量が大きくなると、骨量が減り、骨の内部がスカスカになっていきます。例えていうなら、家の梁や柱の中が、スカスカになることを想像してみましょう。家の構造上、支えがスカスカになると、地震など大きな力がかかった時に、家が壊れてしまいます。体の骨の場合、この状態が進行していくと、骨折しやすくなり、転倒した場合大腿骨骨折、骨盤骨折、脊椎骨折などが起こり、高齢者の場合、治癒が困難となり、寝たきり状態になることもあり、QOLの低下に繋がります。特に女性の場合、閉経後ホルモンバランスが変化し、骨粗鬆症になりやすいと言われています。内科や整形外科で、骨密度の測定結果で、骨量が減少していると、骨粗鬆症防止のためにお薬の服用を勧められます。
お薬はなぜ必要なのでしょう
骨代謝のバランスが崩れ、破骨細胞による骨吸収量が増えている状態なので、骨吸収を抑え骨量が減らないようにしなくてはいけません。そのためのお薬が、骨粗鬆症のお薬で「骨吸収抑制薬」と呼ばれています。いくつか種類がありますが、ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)が特に有名です。飲み薬のほか、注射薬があり、一日一回服用、1週間に1回の服用、ひと月に1回の注射など、処方の仕方も、多岐にわたっています。
歯科治療との関係は?
骨粗鬆症は、体の骨だけでなく、顎の骨にも影響を及ぼします。骨粗鬆症の方は、骨の新生が、健常者に比較して低下しているので、インプラント手術の場合、骨とインプラントとの結合が困難となるため、オペが非常に難しくなります。また、骨代謝を人為的に変えているため、抜歯やインプラントなどの骨への侵襲が大きい処置の後、「顎骨壊死」=「顎の骨の壊死」が起こることがあります。飲み薬の場合、頻度は0.1%(千人に1人)と多くはないですが、一度発症すると治りにくいため、非常につらい病気です。
歯科からのお願い
歯科の診察時に必ず問診していますが、万一の顎骨壊死のリスクを避けるため、骨粗鬆症のお薬や注射をされている方は、必ずお教えください。お薬の影響は骨の中に数カ月残るため、薬服用を中止した方も必ずお申し出ください。
歯科治療(特に抜歯や外科処置)を受けることが可能か、また服用を中止するかは、医科の主治医と相談して決めますので、自己判断はおやめください。ご本人の骨粗鬆症の症状、お薬服用期間を判断して、治療内容が変わってきます。また、服用を開始する前に、医科の主治医から歯科受診を勧められることがあります。服用前に、抜歯や外科処置を行うことが望ましいこともあるので、医科の主治医の指示は必ず守って、歯科受診をお願いいたします。
次回は糖尿病のお薬についてお話します。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子