こんにちは。大阪市福島区の歯医者 富永歯科クリニック院長富永佳代子です。前回に引き続き、抜歯、インプラントなどの外科治療を受ける際に、注意が必要な病気やお薬についてお話します。今回は、血栓や血液をサラサラにするお薬について、ご紹介します。
血栓症と血液サラサラにする薬
血栓症とは、どのような病気でしょうか?
血管内に血栓(血の固まり)ができてしまい、血管を塞いでしまうことで起こる病気です。血管がふさがると、その先の細胞に栄養が届かず、将来的に壊死を起こしてしまいます。脳や心臓の血管が詰まり、脳梗塞や心筋梗塞になった場合は、命にかかわります。
血栓には、2種類あり、動脈にできる動脈血栓、これは血流のスピードが速く血液の粘度と血流の速度のバランスにより、血小板が凝集してしまうことで発生します。もう一つは、静脈にできる静脈血栓、これは静脈の血流が遅い時に、凝固作用のある赤血球とフィブリンが固まることにより血栓になります。
お薬はなぜ必要なのでしょう?
血栓症の発生を抑制するために服用するのが「抗血栓薬」、つまり「血液をサラサラにするお薬」です。動脈で血小板が固まらないようにするのを「抗血小板薬」といい、「バイアスピリン」が知られています。また静脈で赤血球とフィブリンが固まらないようにするのを、抗凝固薬といい「ワーファリン」が有名です。これらのお薬を服用している方が、近年増加傾向にあります。。血栓の形成を予防するお薬の他にも、できてしまった血栓を溶かすお薬もあります。これらは、血栓が血管を塞がないように、飲み続けなければなりません。
歯科治療との関係は?
抗血栓薬を服用している方は、出血が止まりにくい状況にあります。抜歯やインプラントなどの外科治療を受けるときに影響があります。抜歯の際には、大きな血管を切ることはないのですが、じわじわと出血が続きます。通常抜歯後、5~10分で止血しますが、15分から30分の時間を止血に要します。一度に多くの歯の抜歯が必要な場合や、骨の中に埋まっている親知らずの抜歯の際には、病院の歯科口腔外科での治療が、望ましいこともあります。
歯科からのお願い
他のお薬服用にも言えることですが、血栓症のお薬を自己判断で休薬することは、絶対にやめてください。薬を服用しないことで、脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまったら、本末転倒です。休薬して外科処置を行うかどうかは、歯科とかかりつけの医科との相談により決定します。以前は、抗血栓薬は、外科治療の際に服用を短期間中止することが常識でしたが、現在では、「休薬しないで外科処置を行う」ことが一般的になっています。止血のために、30分くらい時間が必要になることもありますが、出血が止まりにくいことが予想される場合は、「止血シーネ」というマウスピース型の装置を作り、前準備をすることもあります。
外科処置後の生活行動注意は、一般的な場合と同様、当日の飲酒の禁止、温泉やサウナなど体温上昇の禁止、刺激物の摂取禁止、禁煙をお願いします。お口の中は、少しの出血でも血の味が広がるために、出血が続いていると不安になる方もおられますが、24時間は少し血の味がしても、過剰な心配は必要ありません。枕カバーを唾液に混じった血で汚すこともありますが、よほどのことがない限り、大出血はありません。但し、外科処置後の消毒や傷口の確認などの処置はキャンセルせず、通院をお願いします。また、処置後不安な場合は、遠慮せず歯科医院にご相談ください。
次回は骨粗鬆症の薬についてお話します。
富永歯科クリニック院長 富永佳代子